事件前夜

主に映画の感想を書いていきます。

2021年公開映画 ベスト10

1作ずつの感想もやっと書き終わったところで、2021年の個人的ベスト10を残しておく。今年、映画館で観た作品数は66本。何と、昨年より10本近く減ってしまった。私が出不精なせいもあるが、ゲームや漫画、サブスクのウィッシュリストなど、映画の他にも積み残したものが山ほどあり、その消化に時間が撮られた事も大きい。正直な話、現時点で積んでいるものだけでも生きている間に消化できるかも怪しくなってきた。そろそろ、終活も頭に入れた方がいいかもしれない。まあ、その前にコロナのせいで仕事が無くなり就活する羽目になりそうだが…

 

ジェームズ・ワン『マリグナント 凶暴な悪夢』
濱口竜介『偶然と想像』
今泉力哉『街の上で』
岨手由貴子『あのこは貴族』
濱口竜介『ドライブ・マイ・カー』
ニア・ダコスタ『キャンディマン』
クロエ・ジャオ『ノマドランド』
ジェームズ・ガン『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』
リドリー・スコット『最後の決闘裁判』
M・ナイト・シャマラン『オールド』

 

①はホラー映画を愛する全ての人にご覧頂きたい、マスターピースとも言うべき作品。引用とサンプリングだけでここまで心を動かす作品が作れるのだ。日本映画にとって2021年はまさに濱口竜介の年だった。②と⑤のどちらを上にするか迷ったが、どちらも傑作である事は保証する。多作の印象が強い今泉力哉にとっても、③は『愛がなんだ』と並ぶ代表作と言っていいだろう。何もしない、何も始まらない日々の愛おしさが、変わり続ける下北沢の風景と共に刻み込まれていく。④は『エドワード・ヤンの恋愛時代』の様な映画を!という意気込みで作られたそうだが、緻密な空間設計などもはや堂に入った成熟ぶりである。ジェンダー論の範疇を超えて日本全体の社会構造を問う射程も獲得した意欲作。⑥は意外な拾い物だった。ジョーダン・ピールの思想性とニア・ダコスタのスタイリッシュな映像美が組み合わされ、リメイクながら唯一無二の世界を作り上げている。ジョーダン・ピールは監督より制作とか脚本の方が向いてるのでは。クロエ・ジャオは⑦以外に『エターナルズ』も良かった。これだけのブロックバスターを実績の少ない監督に任せたマーベルの懐の大きさもすごい。逆にDCは⑧を実績十分の監督に任せてシリーズの再起を図ったと言えるだろう。もちろん、ジェームズ・ガンは十二分にその期待に応えている。リドリー・スコットという人はどんな題材でも面白く撮れる、という訳ではなく脚本の出来不出来に大きく左右される監督だと思うが、⑨はマット・デイモンベン・アフレックによる脚本が非常に素晴らしかった。ガス・ヴァン・サントではなくリドリー・スコットに話を持ち込んだのは、アクションが撮れる監督を探していたからだろうか。⑩は理由もへったくれもなく意地で入れた。監督のベストでない事は分かっているが、それでも擁護したい何かがある。
ベスト10には入れなかったが、その他『Swallow/スワロウ』『すばらしき世界』『ラストナイト・イン・ソーホー』『THE MOLE (ザ・モール)』などが印象に残った。