事件前夜

主に映画の感想を書いていきます。

2021-11-01から1ヶ月間の記事一覧

デヴィッド・ゴードン・グリーン『ハロウィン KILLS』

なぜブギーマンは何度も甦り、ハロウィンの悲劇は繰り返されるのか ジョン・カーペンターによる1978年のホラー・クラシック『ハロウィン』の40年後を舞台にした2018年版『ハロウィン』は、全米公開初週で7600万ドル以上の興行収入を稼ぐヒットとなった。その…

クォン・オスン『殺人鬼から逃げる夜』

殺人鬼に追われる主人公の孤独は、聴覚障害者に対する社会的無関心と繋がっている 日本でも吉岡里帆主演でリメイクされた韓国映画『ブラインド』は交通事故で視力を失った主人公がサイコキラーに狙われるスリラーだったが、本作の主人公ギョンミは聴覚と発話…

首藤凜『ひらいて』

強引に扉をこじ開けて入り込んでくる誰かを、私たちは時に必要としている 綿矢りさの小説はデビュー作の『インストール』ぐらいしか読んでおらず、その映画版はいかにもTVマンが演出したといった感じのノリが鼻について楽しめなかったのだが、大九明子が監督…

ニア・ダコスタ『キャンディマン』

キャンディマンはアメリカの負の歴史が産み落としたアンチ・ヒーローなのだ ここ最近、80年代から90年代にかけてのホラー映画のリメイク、リブート作品が続いているが、いよいよ『キャンディマン』ときた。クライヴ・バーカーが製作総指揮を務めた1992年のオ…

ドゥニ・ヴィルヌーヴ『DUNE/デューン 砂の惑星』

ドゥニ・ヴィルヌーヴの作りだすビジュアルには枯淡とでも言うべき味わいがある まさか、今頃になって『デューン』の再映画化が果たされるとは…人間、長生きはするものだ。アレハンドロ・ホドロフスキーによる映画化企画が頓挫し、デヴィッド・リンチが監督…

リドリー・スコット『最後の決闘裁判』

真実を「藪の中」から引きずり出せ 83歳になっても相変わらず旺盛な創作意欲を見せるリドリー・スコットの新作は、百年戦争に揺れる14世紀のフランスを舞台に実際に行われた決闘裁判の顛末を描いた、いわゆるコスチューム・プレイものである。当時のフランス…

キャリー・ジョージ・フクナガ『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』

本作は確かにジェームズ・ボンドの物語だが、ボンド映画とは言えない 当初は2020年2月に公開予定だったこの映画、新型コロナウイルスの影響で何度も延期され、ようやく陽の目を見たのが何と2021年の10月である。当然、映画はとっくに完成していたので、映画…

マイケル・チャペス『死霊館 悪魔のせいなら、無罪』

ジェームズ・ワンのホラー映画が描いているのは視線に対する恐怖なのだ 現代ハリウッドホラーのキーパーソン、ジェームズ・ワンとリー・ワネルは映画学校で出会い、2003年に1本の短編映画を作る。それが、世界中で大ヒットしたシチュエーション・スリラー『…