事件前夜

主に映画の感想を書いていきます。

2020-07-01から1ヶ月間の記事一覧

フランソワ・オゾン『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』

ローマ・カトリック教会の神父、ベルナール・プレナが1971年から91年にかけて、80人以上の少年に性暴力を働いたとされる事件は、人口の70%がカトリックであるフランス全土を震撼させた。この事件は現在も係争中ではあるがが、その捜査や裁判の過程で暴露され…

ヨハネス・ロバーツ『海底47m 古代マヤの死の迷宮』

『クロール―凶暴領域―』の感想でも書いたのだが、サメというのは水中でしか生きられないので、こちらが陸にいる限り怖くないものである。その為、製作者たちはサメが人を襲う新たなシチュエーションを生み出す為に、あの手この手の工夫を凝らしてきた。中に…

トレイ・エドワード・シュルツ『WAVES/ウェイブス』

近年、独創的で質の高い作品を連発し続けるアメリカの製作会社A24の新作『WAVES/ウェイブス』は、フロリダを舞台に現代のティーンエイジャーが抱える苦悩を描いた青春映画の恰好をとっているが、特筆すべきは登場人物たちの感情や物語の展開にマッチした挿入…

リー・ワネル『透明人間』

透明人間 (字幕版) エリザベス・モス Amazon ユニバーサルがMCUに対抗してぶち上げた「ダーク・ユニーバース」なるモンスター映画のリブート企画も、肝心の第一作『ザ・マミー 呪われた砂漠の王女』が評価、興行成績とも散々の結果に終わり、速攻で無かった…

ジェラルド・カーグル『アングスト/不安』

1983年にオーストリアで公開された本作は、その凄まじい内容から1週間で上映打ち切りになったらしい。ヨーロッパでも上映が禁止され、イギリスとドイツに至ってはビデオの発売も禁止となった。アメリカでは「成人向け」を表す「X指定」の更に上をいく「XXX指…

グリンダ・チャーダ『カセットテープ・ダイアリーズ』

前回扱った『サンダーロード』に続き、またもやブルース・スプリングスティーンの名が映画に登場するので驚いた。これは何なんだろう?ジョン・レノンやボブ・ディランじゃ駄目なのか?まあ、単なる偶然だとは思うが…とはいえ、『サンダーロード』ではあくま…

ジム・カミングス『サンダーロード』

ジム・カミングスが監督・脚本・編集・音楽・主演を1人でこなした本作は、2016年のサンダンス映画祭でグランプリを受賞した他、様々な映画祭で高い評価を受けた。メジャーな映画会社が周到なマーケティングと大規模な資金の投入によって、ブロックバスター映…

エンニオ・モリコーネ追悼

エンニオ・モリコーネが2020年7月6日に死去した。享年91歳である。映画音楽を手掛け始めたのが1960年代、それから2010年代までおよそ60年近くも第一線で活躍していた。近年は新作の話も無かったと思うので、すると彼が最後に音楽を手掛けた映画はジュゼッペ…

おまえがアップリンクに行こうが行くまいが知った事か。

私は関西在住なので有限会社アップリンクの運営する映画館は今まで利用した事が無い。ただ、アップリンクの配給した映画は何本か見ていたし、代表である浅井隆氏は映画ファンの間では有名な人なので名前だけは知っていた。コロナ禍で遅れていたアップリンク…

ダルデンヌ兄弟『その手に触れるまで』

ダルデンヌ兄弟の映画といえば、市井の人々が抱く苦悩をテーマにしたリアリスティックなストーリーと、ぎりぎりまで対象に近づいた手持ちカメラによる撮影がその特徴として挙げられる。というと、何か社会派ドキュメンタリーの様な作風を想像してしまうかも…