事件前夜

主に映画の感想を書いていきます。

2022-07-01から1ヶ月間の記事一覧

ジョセフ・コシンスキー『トップガン マーヴェリック』

トム・クルーズの顔にはアメリカ映画の歴史が皺として刻み込まれている 今は亡きトニー・スコットの出世作『トップガン』が公開されたのが1986年、何と36年ぶりの続編である。私でなくとも今さらそんなもん作ってどうするんだ?と思った方は多いだろう。前作…

樋口真嗣『シン・ウルトラマン』

全てが引用と模倣で組み立てられた批評無用の異様なリメイク この作品、企画と脚本を務めた庵野秀明の名前ばかりが喧伝されているが、あくまで監督としてクレジットされているのは樋口真嗣である。『シン・ゴジラ』では庵野秀明が総監督と脚本を、樋口真嗣が…

李相日『流浪の月』

社会的マイノリティに対するあまりにも鈍感な感傷の垂れ流し 2020年本屋大賞を受賞した凪良ゆうの小説を原作にした李相日の新作は、ある幼児誘拐監禁事件の犯人と被害者の少女が心を通わせていく様を描いた問題作である。例えば、スタンリー・キューブリック…

エドガー・ライト『スパークス・ブラザーズ』

メイル兄弟が抱く映画への見果てぬ夢 この映画を観るまで私はスパークスについてほとんど何も知らなかった。予習がてら、これまでのアルバムを片っ端から聴いていったのだが、彼らがアメリカ出身のバンドというのは少し意外に感じた。そのひねくれたメロディ…