事件前夜

主に映画の感想を書いていきます。

2021-12-01から1ヶ月間の記事一覧

クロエ・ジャオ『エターナルズ』

クロエ・ジャオは意外に職人監督的な資質を持っているのかもしれない 本作にマーベル作品としては初の同性愛者のヒーローが登場すると発表されて以降、公開前から投稿型レビューサイトでは低評価爆撃が繰り返されたらしい。こうした荒らし行為はMCU初の女性…

マッツ・ブリュガー『THE MOLE(ザ・モール)』

優れたスパイになるには、「何もない」という事が最も重要なのだ。 『ザ・レッド・チャペル』の公開以降、北朝鮮大使から「良心のない犬」と罵られ(まあ、それについては私も同意するが…)、北朝鮮への入国が難しくなっていたマッツ・ブリュガーの元に、あ…

マッツ・ブリュガー『ザ・レッド・チャペル』

嘘から始まった関係が、心と心の交流に繋がる事もある マッツ・ブリュガーは、ジャーナリストとして活動する傍ら過激な内容のドキュメンタリー映画を撮り続けている、デンマークのマイケル・ムーアとでも言うべき人物だ。その最新作である『THE MOLE(ザ・モ…

ジェームズ・ワン『マリグナント 凶暴な悪夢』

本作にオリジナリティなど一切ない。にもかかわらず、未知の体験を私たちに与えてくれる もちろん、これまでジェームズ・ワンの才能を疑った事は一度もないが、まさかここまでの高みに辿り着くとは…ホラー映画ファンのみならず、全ての映画ファンに観て頂き…

ケヴィン・マクドナルド『モーリタニアン 黒塗りの記録』

テロに恐怖する人々の暴走が、新たなテロリストを生んでいく キューバのグァンタナモ米軍基地内に設置されたグアンタナモ湾収容キャンプには、アメリカ軍によってテロへの関与を疑われ強制連行された人々が、未だに収容、監禁されている。この施設は2002年、…

アレクサンダー・ナナウ『コレクティブ 国家の嘘』

正しさだけでは勝つ事ができない。本作はその残酷な事実を教えてくれる 国家の不正を暴こうとする記者たちの姿を描いた映画、というのは『大統領の陰謀』とか昔から色々とあって、最近では『ペンタゴン・ペーパーズ』や『記者たち~衝撃と畏怖の真実~』とい…

ウテール・ベン・ハニア『皮膚を売った男』

主人公に富をもたらし束縛するものを、実は私たちも背負っている筈だ 第93回アカデミー賞で国際長編映画賞にノミネートされ、第77回ヴェネチア国際映画祭ではオリゾンティ部門男優賞を受賞した本作、まず何とも人を喰った様な奇妙な設定が目を惹く。不用意な…