事件前夜

主に映画の感想を書いていきます。

2023-01-01から1年間の記事一覧

石川慶『ある男』

ご都合主義的なプロットに難はあるが確かな演出力を感じさせる堅実な一作 石川慶の前作『Arc アーク』が海外SFが原作という事もあって、かなり奇を衒った作りだったのに対し、本作は長編デビュー作『愚行録』にテイストの近い、ウェルメイドなサスペンスであ…

今泉力哉『窓辺にて』

過去と未来のあいだから、一歩だけ足を踏み出す事 ここ最近の今泉作品というとやはり『街の上で』が白眉だと思うのだが、若手俳優を揃えどちらかというとインディーズ映画的な佇まいだった同作に比べると、最新作『窓辺にて』は稲垣吾郎や玉城ティナといった…

イ・サンヨン『犯罪都市 THE ROUNDUP』

何といっても、マ・ドンソクは人から怒られている姿がサマになるのだ 『新感染 ファイナル・エクスプレス』と共に俳優マ・ドンソクのイメージを決定づけ、一躍スターダムに押し上げた『犯罪都市』、待望の続編である。監督はカン・ユンソンから前作で助監督…

コゴナダ『アフター・ヤン』

記憶は引き継がれ、残された者の想いは募る 私は映画を観た後にメモを取ったりしないので、鑑賞後すぐならまだしも、時間が経ってから映画の感想を書こうとすると内容を全く思い出せず難儀する事が多い。この『アフター・ヤン』が公開されたのは2022年10月21…

S・S・ラージャマウリ『RRR』

とてつもないスケールと熱量で語られるインド独立をめぐる神話 この記事の草案を練っているタイミングで、『RRR』劇中歌の「Naatu Naatu」がゴールデン・グローブ賞で歌曲賞に輝いた、とのニュースが飛び込んできた。『バーフバリ』二部作の圧倒的な完成度で…

原田眞人『ヘルドッグス』

岡田准一の存在感が映画に暴力の予感を呼び込む 2023年の1月を既に迎えたが、2022年に観た映画の感想が全然書き終わっていない。とりあえず、それらを全て書き終えてから年間ベスト10について考える事にする。 私は原作小説を読んでいないが、あらすじを見て…