事件前夜

主に映画の感想を書いていきます。

ファティ・アキン『女は二度決断する』

 

女は二度決断する [Blu-ray]

女は二度決断する [Blu-ray]

  • 発売日: 2018/11/02
  • メディア: Blu-ray
 

「家族」「正義」「海」の三幕で構成される本作は、凶悪なテロ犯罪により家族を失ったダイアン・クルーガーが、魂の救いを求めて彷徨する姿を追う。二幕目の緊迫感あふれる法廷劇や、三幕目のサスペンスフルな展開を見れば、この監督が娯楽映画に精通している事が実感できるが、犯罪被害者が抱える苦悩をやはり娯楽映画のフォーマットで描いた『スリー・ビルボード』が、オープンエンドによって回避した結末を、本作はよりはっきりとした形で描いている。しかし、その点については評価の分かれるところだろう。女は、二度決断する。ただ、一度目の決断と二度目の決断には大きな隔りがある。その隔りに贖罪への意志や神への祈りといった敬虔な感情を見出す人もいるだろうし、結局それは自爆テロと同じではないか、と断罪する人もいるかもしれない。トリュフォー大人は判ってくれない』やゴダール『軽蔑』へのオマージュに満ちた三幕目は、陽光降り注ぐ海辺の叙景が、私たちが生きる事とどの様に対峙すべきなのかを静かに問い掛ける。ぜひ、誰かと感想を語り合ってほしい作品である。