事件前夜

主に映画の感想を書いていきます。

コーネル・ムンドルッツォ『ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲』

 

邦題はサミュエル・フラーの『ホワイト・ドッグ~魔犬』のもじりなのだろうが、そちらを観ていないので比べる事ができない。こうした動物パニックものの場合、人間には全く理解不能の行動原理で動物が人間を襲う場合と、人間に酷い目に遭わされた動物がブチ切れて人間を襲う場合と2つのパターンが考えられるが、本作は完全に後者である。そうすると、前フリである動物が人間に虐められる場面をどれだけネチネチと丁寧に描くかで、動物が人間を襲った時に得られるカタルシスが変わってくる。つまり、先ほどの2つのパターンのうち、前者は動物に襲われる人間側に観客は感情移入するのに対し、本作を含む後者は人間を襲う動物側に感情移入するのである。本作は犬への虐待が、闘犬への調教という形で為されるので、犬が段々と凶暴な性質に変貌していく過程が説得力を持って描けているし、何でただの犬がこんなに頭良くて強いんだよ、という疑念も解消されている。犬好きなら「こんな人間のクズはさっさとブチ殺せ!」と共感する事間違いなし。