事件前夜

主に映画の感想を書いていきます。

ニコライ・アーセル『ダークタワー』

 

ダークタワー [AmazonDVDコレクション]

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  • 発売日: 2018/12/05
  • メディア: DVD
 

この監督、あまりアクションの演出が得意ではないのだろう。スロー撮影を駆使してスピード感を強調しているつもりらしいが、イリドス・エルバはスピーディでスタイリッシュなガンファイトより、もっと重厚で泥臭い格闘戦に適している様な気がする。ラスボスのマシュー・エコノヒーとの対比という意味でも2人のアクション演出にもっと差を付けた方が良かったのではないか。また、マシュー・エコノヒー以外の敵役にあまりに魅力が無い。その為、タワーを破壊する組織や外界から侵入するクリーチャーの恐ろしさ、底知れなさが伝わってこず、話がこじんまりとしてしまった。
それでも、トム・テイラー演ずる主人公が迷い込む中間世界と根元世界(現実のNY)の対比などは十分に美しいし、現実になじめない少年が異世界で自分の居場所を見つける、という物語は感動的で、全てを失った主人公が新たな父親を発見するラストシーンには思わず涙ぐんだ。
ただ、スティーヴン・キングの原作ファンからすれば納得のいかない出来だろう。キングの小説の魅力は何よりもその過剰なディテール描写にあり、この実写化作品ではそうした要素が全てオミットされているからだ。