事件前夜

主に映画の感想を書いていきます。

ボブ・ペルシケッティ『スパイダーマン:スパイダーバース』

 

 

アベンジャーズ』の最終作が公開される前に、MCUから除け者にされていたソニーからとんでもない作品が出てきた。アメコミの映画化という意味で『スパイダーマン:スパイダーバース』のビジュアルはこれまでとは別次元のクオリティに達している。CGモデルにトゥーン調のテクスチャを貼る、ぐらいの事はこれまでも行われてきたが、ここまで手描きの質感を再現したものは見た事がない。コミックのキャラクターを実写に違和感なく落とし込む事を目指したMCUのフォトリアル路線にほとんど進化の余地が無くなった現在、本作はアニメーションのみならず映画表現の新たな可能性すら切り開くものだと言える。

コミックの様に画面をコマ割にする手法は、『ハルク』の時点でアン・リーが取り入れていたが、本作ではコマ毎に別の物語を進行させるなど、ひとつのショットにありったけの情報を詰め込んでいる。台詞や擬音を音声とは別に文字として挿入する演出もその一例だが、この膨大な情報量とメタコミック的な手法は90年代のジャパニメーションから影響を受けているのだろう。並行世界それぞれに異なるスパイダーマンが存在する、というアイデア自体、いかにも日本人好みの設定で、アニメやゲーム、ラノベなどでよく見かけるものだが、本作はそこに「多様性」というテーマを織り込み、ポリコレ的な配慮も実現している。

とにかく後半の王道的展開は熱く、思わず涙してしまった。しかし、映画館を出た後に車で帰宅する際、警察官に違反切符を切られて感動が一気に冷めた。公文書を偽造をしても不起訴になるのに、ささやかな楽しみを求める一庶民がほんの少し交通ルールを破っただけで6,000円という大金を搾り取る、この国の腐った権力構造には心底うんざりする。映画の中でいくら「平等」を唱えても、現実にはこんな「不平等」がはっきりと存在するのだ。映画の様に並行世界間を自由に移動できるのであれば、とにかく安倍政権など存在しない世界へ行きたい。しかし、現実にはそんな事はできないのだから、選挙で意思表示をするしか手段は残されていない。みんな、選挙へ行こう!多様で公平平等な世界実現の為に、ブタどもに死を!

 

あわせて観るならこの作品

 

実写版ではこれが最高傑作だと思う。

 

スパイダーマン 東映TVシリーズ DVD-BOX

スパイダーマン 東映TVシリーズ DVD-BOX

  • 発売日: 2005/12/09
  • メディア: DVD
 

これも仲間に入れて欲しかった…小学生の頃、友達の家でりんご酢を飲みながら観た記憶がある。