事件前夜

主に映画の感想を書いていきます。

デビッド・リーチ『デッドプール2』

 

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そもそも、本作の主人公デッドプールは不死性をその特性として持っている。これは、アクション映画のヒーローとしては、なかなか扱いづらい能力だ。

何しろ、どれほど激しいアクションシーンが繰り広げられたとしても、主人公が不死身である以上、結局のところ無意味な場面の集積になってしまうからである。従って、本シリーズのアクションシーンには生きるか死ぬかの緊張感が希薄で、どちらかと言えばユーモラスな空気が漂う。作り手たちもその事は重々承知なのだろう、例えば本作がR指定となった理由である、おびただしい量のゴア描写は、作中では悪趣味なギャグとして挿入されている。どこの世界に、身体を真っ二つに引きちぎられるヒーローが存在するのか。その主人公に倣って、本作の登場人物たちはひたすら無意味に、残酷極まりない死を遂げていくのだが、心ある観客であればそのひとつひとつに大笑いするだろう。
さて、その様な無意味な死のオンパレードの中で、唯一の例外が主人公の恋人ヴァネッサの死である。この深刻な重さを持つ死に対し、主人公デッドプールは真正面から対峙する事ができない。彼は、その特性ゆえに無意味で軽い死しか量産できない男だからだ。いくら自殺や復讐を繰り返しても、最愛の人の死という重さには対抗する事ができない。彼の最終的な目標が、敵役の死ではなく、仲間を守るという方向にシフトチェンジしていくのもその為であろう。その様な方向でしか、本作のサスペンス性は生まれ得ないのである。
だからこそ、本作のエンドロールで展開するちゃぶ台返しには驚いた。作り手たちの悪ノリは、最後の最後に本作を丸ごと無意味化させてしまうのだ。この腹の据わり方には恐れ入ったが、困るのはそれによってここまで書いてきた私の拙い感想も完全に無意味になってしまう事である。