事件前夜

主に映画の感想を書いていきます。

マシュー・ボーン『キングスマン:ゴールデン・サークル』

 

1作目は冗談抜きで映画史に残る傑作だと思っている。延々と続くアクションシーンの過剰さが、風変わりではあるもののスパイ映画としては王道とも言える筋運びと微妙な緊張関係を保ちつつ、最後まで破綻なくまとめあげたマシュー・ボーンの手腕には感動すら覚えたものだ。本作にいまひとつ乗りきれなかったは、その手腕が『キングスマン』の続編を作る、という製作会社の意向に沿う為だけに発揮されているからだろうか。確かに、今回も前作の様な長回しを駆使した戦闘場面は用意されている。しかしそれは結局、映画のクライマックスを盛り上げる為の演出のひとつとして回収されてしまうのである。前作の教会での戦闘場面には、映画的な必然性など何も無かったのだし、だからこそ観客はいったいこの映画が何を見せようとしているのか、戸惑いを覚えながら固唾を呑んで見守っていた筈だ。前作ファンの思い入れをあっさりとぶち壊してしまうマシュー・ボーンの心意気には大いに感じたが、願わくばその破壊精神をストーリーだけではなく、映画そのものに向けて欲しかった。