事件前夜

主に映画の感想を書いていきます。

ジョーダン・ピール『ゲット・アウト』

 

ゲット・アウト [Blu-ray]

ゲット・アウト [Blu-ray]

  • 発売日: 2018/11/07
  • メディア: Blu-ray
 

コメディアン出身の監督らしく、本気とも冗談ともつかない、トンデモない大オチが待ち受けるB級ホラーである。それでもアホらしくならずに最後まで引き込まれてしまうのは、幾つかの立派な理由がある。ひとつは、どちらかというと古典的とも言える落ち着いた画作りが、映画にある種の品の良さを与えている事。人を喰ったアイデアと、ウェルメイドな演出法の組合せは、M・ナイト・シャマラン作品を思わせるが(近年の大傑作『ヴィジット』を思い出す人も多いだろう)、派手なショック描写よりもジワジワと醸し出される不気味さに重きを置いた演出には、Jホラーの影響が大きい様だ。更にもう一点、レイシズムという重いテーマを突拍子もないアイデアに昇華させながら、人々の差別感情が劣等感の裏返しである、という核心を見事に突いた脚本である。『ホット・ファズ-俺たちスーパーポリスメン!』などが好例だが、こうしたジャンル映画の見かけの馬鹿馬鹿しさに決して騙されてはならない。その裏には、生真面目なまでの批評性が隠されている。