事件前夜

主に映画の感想を書いていきます。

リドリー・スコット『エイリアン:コヴェナント』

 

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シリーズ第1作『エイリアン』は、フェミニズムという観点からも読み解く事のできる作品だった。それは何も、シガニー・ウィバー演ずる「闘う女性」の存在だけが理由ではない。エイリアンは人間を宿主として増殖していくのだが、その時、人間側のジェンダーは完全に無視される。つまり、出産から妊娠という行為が女性性から解放される訳で、男性でも母親になれてしまうのだ。この様な視点は、『プロメテウス』から始まるリブートシリーズにおいても、共有されているだろう。『プロメテウス』のヒロイン、ショウ博士は割腹する事でエイリアンの子供を堕胎させていた。直接の続編である本作において明かされる、アンドロイドのデヴィッドがショウ博士にした仕打ちは、堕胎という行為への男性側からの復讐だと言える。それは、愛という名の下に行われる最も残酷な行為だろう。しかし、男女の別なく生物であれば全て母にしてしまうエイリアンにおいて、それでは父という存在は誰にあたるのか。この疑問は、エイリアンひいては、人間存在の起源をめぐる問い掛けへと繋がっていく。更なる続編が作られるのであれば、その辺りが描かれるのではないか。