事件前夜

主に映画の感想を書いていきます。

ギャヴィン・オコナー『ザ・コンサルタント』

 

ザ・コンサルタント [Blu-ray]

ザ・コンサルタント [Blu-ray]

  • 発売日: 2017/12/06
  • メディア: Blu-ray
 

『96時間』や『イコライザー』など、平凡なオッサンが実は完全無欠の殺し屋でした、という映画が最近増えている気がするのだが、リーアム・ニーソンにしろデンゼル・ワシントンにしろ、殺し屋達が揃いも揃ってニューロティック(神経症的)な造形を為されているところは面白い。本作もご多分に漏れずなのだが、より明確な病名を付与する事で主人公の異質性を先に挙げた2作品以上に際立たせている。この異質性こそが、映画におけるヒーローとその他大勢を隔てる重要なポイントとなるのは当然だ。桁外れの計算能力と人間離れした集中力。会計士としてもスナイパーとしても主人公の非凡さを保証するこれらの能力が、本作では高機能自閉症という病から導き出されている。勿論、実在する病気をこの様な形でフィクションに導入する事にはある種の危うさが伴うし、本作が多様性の尊重といういかにもなテーマを最初と最後に強調したのも、その辺りに気を配った結果なのだろう。いずれにせよ、もはや現在のアメリカでは、こうした「屈折」を取り入れる事でしか、アクションヒーローを生み出す事ができないのである…とまあ、そんなめんどくさい事は考えずに、この映画についてはただ「最高!」と叫んでいればよろしい。恥ずかしながら、私はこの映画をベン・アフレック監督作だと最後まで思い込んでいて、ギャヴィン・オコナーという名前をエンドクレジットで初めて知ったのだが、この男はただ者ではない。アクションシーンの演出能力の高さもさる事ながら、その画面構成において70年代の暴力映画を思わせる様な時代錯誤的な感性を持ち合わせている。