事件前夜

主に映画の感想を書いていきます。

ロン・ハワード『インフェルノ』

 

基本的にこのシリーズは「謎解き」がメインに据えられてはいない。なぜなら、観客にあらかじめ謎が提示されている訳ではないからだ。トム・ハンクス演じる主人公、ラングドン教授が様々な美術品や建築に隠された秘密を解き明かした時に初めて、私達はそこに謎があった事に気づかされる。言わば、「謎」の発生と「謎解き」が同時進行する形で、サスペンスが展開するのだから通常のミステリーにある様な、「謎」そのものの魅力によって観客をの興味を引っ張る様な構造になっていない。それでも第1作『ダ・ヴィンチ・コード』では、最後に大ネタが用意され歴史ミステリーとしての恰好を保っていたが、第2作『天使と悪魔』と本作にはそうした大ネタは無く「謎解き」よりもサスペンス色が強まっている。劇中、『めまい』や『白い恐怖』を思わせるシーンが登場し、サスペンス映画の巨匠ヒッチコックへオマージュが捧げられている様だ。今どき、ヒッチコック流のクラシックなサスペンスを目論んで成功させてしまうのは、ロン・ハワードの堂に入った演出力の賜物だろうか。できれば、前2作を観てから観賞する事をお勧めする。