庵野秀明『シン・ゴジラ』
ゴジラに蹂躙され跡形も無くなった市街地の惨状、川が逆流し係留されていた船がひとかたまりになって押し流される強烈なイメージ、本作が3.11以降に作られた怪獣映画=災害映画である事を強く意識させるシーンである。放射能汚染についての細かなディテールや、硬直した官僚組織を象徴する長ったらしい会議の場面などもそうだが、初代『ゴジラ』が描いた核の恐怖に今の日本がどの様に返答するか、作り手達が娯楽映画の枠組みで真摯に考え抜いた事に賞賛を送りたい。その思いが強過ぎた為か、怪獣映画としてはいささかカタルシスに欠ける展開になってしまうのだが、凝固したゴジラに長谷川博己が向ける厳しい眼差しは、廃炉作業が進行する福島原発に私達が向けるそれと重なり合う。