事件前夜

主に映画の感想を書いていきます。

ブック の検索結果:

レイナルド・マーカス・グリーン『ドリームプラン』

…賞受賞作『グリーン・ブック』もまた、白人たちに「例外」として認められたジャズピアニスト、ドン・シャーリーの物語だった(もちろん、こうした構造はアカデミー賞を始めとする映画界にも存在する筈だ)。リチャードがスポンサーやコーチ達と待遇をめぐってハードな交渉を続けたのも、彼らが「例外」としての「居場所」ではなく、「地位」を獲得する為に必要だったからだ。『ドリームプラン』とはいかにも日本らしい邦題だが(現代は『King Richard』)、その甘い響きの裏には虐げられてきた者の決死の…

2020年公開映画ベスト10

…オリビア・ワイルド『ブックスマート 卒業前夜のパーティデビュー』 ①は『薄氷の殺人』で上がったハードルを易々と超えてみせたフィルム・ノワールの快作。近年、ここまで絵面の恰好良い映画は観た事が無い。ハッタリの効かせ方はビー・ガンの『ロングデイズ・ジャーニー この世の涯てへ』に似ている面もあるが、個人的にシンプルな作りのこちらの方が好み。②は意外な伏兵というか、邦画でよくあるほんわか系の青春映画かな、と思っていたらとんでもない強度を秘めた作品だった。決して安易な結論に飛びつかない…

オリビア・ワイルド『ブックスマート 卒業前夜のパーティデビュー』

…もの)入りしていた『ブックスマート 卒業前夜のパーティデビュー』は当初、この『スーパーバッド 童貞ウォーズ』の女性版、といった形で構想されたのだろう。この逆転の発想は、仲良し女子高生3人組がプロムの晩にヴァージンを失おうと計画する『ブロッカーズ』(これもセス・ローゲンが製作に絡んでいる)に近いが、ただ『ブロッカーズ』はそのヴァージン喪失作戦を阻止しようとする親たちの奮闘に焦点を当てておりいささか趣が異なる。それでも、警察を巻き込んでの大騒ぎになったり、ゲロを吐くギャグがあった…

ジャスティン・ペンバートン『21世紀の資本』

…21世紀の資本』は、ブックオフに大量に並ぶ事になった。 まあ確かに、700ページを超える経済学(正確には社会科学だが)の本を読み通すだけでも大変な訳で、致し方ない面もあるのだろう。実際、私も読んでいない。この映画を観る前に予習をするかと本屋に買いに行ったが、最初の数ページを読んだだけで嫌になってしまった。また、この世の中は間違ってる!という結論には同意できても、ピケティがその打開策として主張する、国際的な財産税など実現できるはずもないので、なーんだ、じゃあどうしようもないじゃ…

スパイク・リー『ブラック・クランズマン』

…を惜しくも『グリーンブック』に奪われた『ブラック・クランズマン』だが、どうやらスパイク・リーは『グリーンブック』をあまり気に入っていないらしい。その理由については具体的に語ってはいないが、両方の作品を観た後で私なりに想像すると『グリーンブック』は結局「寓話」じゃないか、という想いがあるのかもしれない。もちろん、『グリーンブック』は『ブラック・クランズマン』と同じく、実話を元にした映画である。潜入捜査ものというジャンル映画的側面を強調した分、もしかすると『ブラック・クランズマン…

ロバート・ロドリゲス『アリータ:バトル・エンジェル』

…ブルーレイ版スチールブック仕様(Funko/ファンコ POCKET POP!キーチェン付き) [Blu-ray] 発売日: 2019/09/11 メディア: Blu-ray 木城ゆきとのコミック『銃夢』がハリウッドで映画化される、というニュースが流れたのは2003年の事。当時は私も原作を読んでいたので非常に興奮した覚えがあるが、それから15年何の音沙汰も無かったこのプロジェクトが遂に実現のはこびとなった。ジェームズ・キャメロンが『アバター』の続編で多忙な為(この『アバター』続…

ピーター・ファレリー『グリーンブック』

ホワイトハウスで演奏した経験もある天才黒人ピアニスト、ドクター・シャーリーが、未だに人種差別が根強く残るアメリカ南部へのツアーを計画し、その用心棒として粗暴なイタリア系白人トニー・リップを雇う。いかにも、ピーター・ファレリーらしい逆説的な設定である。そもそも、ファレリー兄弟といえば結合双生児が、結合していない双生児のふりをする『ふたりにクギづけ』や多重人格の男のそれぞれの人格が1人の女をめぐって恋のさや当てを繰り広げる『ふたりの男とひとりの女』、面食いの男がブスが美人に、美人…

ケヴィン・マクドナルド『ホイットニー〜オールウェイズ・ラブ・ユー〜』

…クソン THIS IS IT(特製ブックレット付き) [Blu-ray] 発売日: 2010/01/27 メディア: Blu-ray スキャンダルに悩まされていたマイケル・ジャクソンにホイットニーが呼び出され、ホテルの1室で互いに一言も喋らず一緒にいた、というエピソードが泣ける。 ありがとう、トニ・エルドマン [Blu-ray] 発売日: 2018/01/06 メディア: Blu-ray なぜ、この映画?という方はぜひ観てください。笑えて泣ける名作。以前に感想を書いています。