グスタフ・モーラー『THE GUILTY/ギルティ』
よくできた短篇ミステリーの様な映画だ。
まず謎めいた序盤で読者を引き込み、中盤はサスペンスフルな展開で飽きさせない。ラストにどんでん返しで驚かせてくれ、そして(ここが最も重要なのだが)、全ての謎が解けた後で作品のテーマが浮かび上がってくる。これが、優れた短篇ミステリーの条件だと、個人的に思っている。
本作が以上の条件を備えている事は、映画をご覧になられた方にはお分かりだろう。では、最後の条件、全ての謎が解き明かされた後に浮かび上がってくるテーマとは何だろうか。ひとつは、タイトルに示されている通り「罪」、もうひとつは「救い」である。この作品で罪を犯したのはいったい誰なのか。この問いに対し、本作は2重3重の答えを用意している。ネタバレになるので詳しくは書けないが、その多層的な罪の迷宮の中で、自らの罪を認めた者だけが他者を救う事ができる。「救い」を求める電話で幕を開けた映画は、やはり「救い」を求める電話で終わる。果たして、電話の向こうの相手は、罪びとを救う事ができるのだろうか。
あわせて観るならこの作品
デヴィッド・R・エリス監督作。本作と同じく電話をフィーチャーした誘拐サスペンス。ただし、こちらは密室劇でなくどんどん場面が切り替わっていくスピード感が魅力。
こちらも緊急通報電話のオペレーターが主役の映画だが、コールセンター内での出来事だけを追った『THE GUILTY/ギルティ』とは異なり、被害者の視点も同時進行的に描かれる。クライマックスに至っては、オペレーター役のハル・ベリーが犯人のアジトへ直接赴くという職権乱用も甚だしい展開になるので、結局はよくあるサイコ・サスペンスに落ち着いてしまった。