事件前夜

主に映画の感想を書いていきます。

メラニー・ロラン『ガルヴェストン』

 

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主人公は、医師から肺ガンである事を告げられた中年男、ロイ。ギャングからの汚れ仕事を請け負っていた彼はある日、ボスの不興を買い組織から命を狙われる立場となる。偶然出会った若い娼婦ロッキーと逃避行の旅を続けるロイは、テキサス州ガルヴェストンの寂れたモーテルに辿り着くが…

病で余命いくばくもない男。少女の面影が残る娼婦。執拗に命を狙うギャングたち。拳銃、車、酒、煙草、そして海…いくら何でもありきたり過ぎる。冒頭から終盤まで、とにかくどこかで見た様な展開のオンパレード。アメリカ探偵作家クラブ賞で最優秀新人賞の候補となった小説が原作らしいが、今のクライムノベルは、こんな紋切り型を組み合わせてそれらしい話を再生産するだけのジャンルになってしまっているのだろうか。だいたい、本作の様な映画や小説が繰り返し作られてきたのは結局、それが男の妄想する理想的な女性像―小女の純粋さと娼婦の妖艶さを併せ持った存在―を担保としているからだろう。メラニー・ロラン監督は女性の立場から、本作のストーリーを虫のいい話だなとは思わなかったのだろうか。

とはいえ、本作のエル・ファニングは確かに圧倒的に美しい。彼女が笑い、泣き、歌い踊る姿を観るだけでも映画館に行く価値はあるだろう。彼女の美しさが、ご都合主義的な本作のストーリーに説得力を与えているからだ。

ちなみに、終盤以降の展開はひと工夫がされていて、定型通りの話には着地しない。その皮肉の利いたひねりについては評価してもいいが、亡き人を想う老境に差し掛かった男が暴風雨と対峙する、というラストシーンは『イコライザー2』まんまだろう。

 

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かつて、スケベなオッサンの妄想をオシャレと呼んだ時代があった。

 

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殺し屋と子供の逃走劇…その手の映画の元ネタは大体これ。ジョン・カサヴェテスの紛う事なき傑作。