フランソワ・オゾン『二重螺旋の恋人』
『彼は秘密の女友達』で性差の壁を軽やかに飛び越えたフランソワ・オゾンの新作は、双子をテーマにしたサスペンスである。愛する夫に秘密の双子が存在した、という発端は、いかにもフレンチ・ミステリーらしいが、中盤からはオゾンの変態趣味が炸裂し、予想外の展開を見せる。双子の存在が隠蔽された自我と結びつくという精神分析的なアプローチはありふれた方法だが、クライマックスにはデヴィッド・クローネンバーグかよ!と言いたくなる人体破壊描写まで登場し、この監督の良い意味での趣味の悪さが堪能できる、エクストリームな1作に仕上がっている。