事件前夜

主に映画の感想を書いていきます。

クリストファー・マッカリー『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』

 

ブライアン・デ・パルマ監督によるシリーズ第1作からはや22年。監督や共演者が交代していく中で、トム・クルーズ演ずるイーサン・ハントは相変わらず、ハリウッドを代表するアクションヒーローとして存在し続けている。この時点で、イーサン・ハントは演じ手交代制を採るジェームズ・ボンドを既に超えていると言えるだろう。

しかも、トム・クルーズのアクションは衰えを全く感じさせないばかりか、その映画的感性はより研ぎ澄まされていく様なのだ。プロペラがもぎ取られ、エンジンも炎上し、醜い残骸として雪上を転がるしかないヘリコプター。しかし、この無残な個体が放つ、圧倒的な存在感は何なのか。ここに、アクション・スターとしてのトム・クルーズの姿が刻印されている、とみる事は決してうがち過ぎではないだろう。本作の撮影中、トム・クルーズは全治数ヶ月の大怪我を負ったらしいが、たとえその身が動かなくなろうとも、彼は自身の老いを引き受けながら、カメラの前に己の醜さを晒し続ける事を覚悟した様である。
アウトロー』以来、全幅の信頼を寄せているクリストファー・マッカリーの手腕は冴え渡っていて、本作の即物的なアクション描写は見応え充分である。また、ストーリー的にも本作はシリーズ集大成的な趣があり、特に『3』以降のファンには涙ものの展開が待っている。