事件前夜

主に映画の感想を書いていきます。

ナナ・エクフティミシュヴィリ『花咲くころ』

1992年、独立直後のグルジアでは政情不安と生活苦で、人々は不満を募らせていた。社会変革や自由を求める人々と、旧来からの伝統や風土を守り通そうとする人々との対立も顕在化し始めている。

こうした不満や対立がやがて、グルジアを度重なる内戦へと導いていくのだが、ではジョージア内戦直前の春、14歳の少女たちはこの不安定な環境が生み出す日々の苛立ちを、どのように解消していくのか。そこに、1挺の銃が持ち込まれる。そこから発射される弾丸は、彼女たちの四方を取り囲む壁を破壊し、たとえつかの間であっても光り輝く未来を見せてくれるのだろうか。実際、この映画に登場する男たちは皆、暴力が生み出す可能性を信じているらしく、明るい日差しの中、ナイフの刃を閃かしている。

結局、現実のグルジアはこの暴力が持つ可能性に賭けていく事になるのだが、それとは反対に本作の少女たちが選び取ったのは銃ではなく、歌と踊りである。彼女たちが憎んで止まない風景に取り巻かれながら、それらを振り払おうするかの様に激しく踊り続ける結婚式の場面は、涙なくして観る事ができないだろう。