事件前夜

主に映画の感想を書いていきます。

チャド・スタエルスキー『ジョン・ウィック:チャプター2』

 

ジョン・ウィック:チャプター2 [Blu-ray]

ジョン・ウィック:チャプター2 [Blu-ray]

  • 発売日: 2018/01/10
  • メディア: Blu-ray
 

前作は主人公の容赦ない殺しっぷりに対して、その動機があまりにしょぼく、「いくら何でもその程度の事でキレ過ぎだろ…」と感じてしまい、キアヌ・リーブス演じる主人公の気が狂っている様にしか見えなかった。もちろん、それが欠点という訳ではなく、スタイリッシュなアクション映画にサイコホラー的な味付けを加えていたのだが、チャプター2では前作でチラ見せしていた裏設定-世界中に張り巡らされた殺し屋ネットワーク-が前景化し、主人公の異常さを飲み込むぐらいに気違いじみた世界が展開していく。それはまるで『不思議の国のアリス』の様だ、というのは言い過ぎか。とにかく、この現実離れした設定のおかげで、俳優達のアクションも舞台セットも終盤になるにつれより抽象度を増し、クライマックスのシーンに至っては、観客はいったい自分が何の映画を観ているのか分からなくなってしまうだろう。激しい暴力描写が多いのになぜか笑えるのは、殺し屋達の戦いが手の込んだゲームの様に描かれているからだ。『マトリックス』に代表される様に、キアヌ・リーブスの掴みどころのない演技は、こうした現実感の希薄な映画が良く似合う。