事件前夜

主に映画の感想を書いていきます。

ダニエル・エスピノーサ『ライフ』

 

ライフ [AmazonDVDコレクション] [Blu-ray]

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  • 発売日: 2018/07/04
  • メディア: Blu-ray
 

WEB版「WIRED」では、この作品をドゥニ・ヴィルヌーヴ監督『メッセージ』と比較して酷評している。いわく、この作品は『エイリアン』と『ゼロ・グラビティ』と『オデッセイ』を足して3で割っただけの映画であり、新鮮味の無さを人気俳優の出演でごまかしているだけだ、と。とりあえず、このライターにお前は金輪際ジャンル映画を観るな、と言っておきたい。このライターは、ジャンル映画における「新鮮さ」とは何か、全く理解していない。したり顔で「観に行く人はみな、これが最初から最後までどういう作品なのかわかっている」などと、ことさら欠点であるかの様に書いているが、ジャンル映画にとってそれは宿命なのだ。問題は、誰もが知っているお話に新しいアイデアをひとつでも付け加える事ができるか、という事であり、その更新の堆積こそが映画史を作ってきたのではないか。ライターが持ち上げる『ゼロ・グラビティ』や『オデッセイ』もその延長線上に存在しているはずだ。では、本作がSFホラーというジャンル映画に付け加えた新しいアイデアとは何か。それは、検疫官を主人公に据え、異生物の「隔離」というテーマを軸にした事だろう。この事によって、SFホラーにありがちな、通路をシャッターで遮断してエイリアンの侵入を防ぐ、という展開に、新たな意味が生まれている。B級映画館たっぷりの「わかってるな」としか言えないラストも素晴らしかった。