大森立嗣『セトウツミ』
原作コミックは1話を読んだだけで傑作だと思った。このノリをどの様に映像化するのかと思ったが、大森立嗣は役者のスキルを信頼し、それを最大限に活かす手法をとった様である。その戦略は正しいし、見事に期待に応えた池松壮亮と菅田将輝の演技力は称賛すべきだろう。心の中の不安や絶望を口にした途端、まるでそれが恥ずべき事であるかのようにはぐらかし、冗談の種にしてしまう。何もかもどうでもいい様な斜に構えた態度をとっているからこそ、前に向かって歩み出せる、そんな時期が誰しもあるものだ。もう少し、劇映画としての味付けが欲しかった、というのは贅沢だろうか。