ダルデンヌ兄弟『サンドラの週末』
本作の主人公サンドラは、映画の最初から終わりまでたったひとつの問いかけを繰り返すだけである。「私が再就職する為に、あなたのボーナスを諦めてくれないか」と。それは、あくまで彼女の個人的な事情に根ざしたものの筈だが、やがて「あなたはどう生きるのか」という普遍性を伴った問いかけに変貌していく。その問いを前に人々は様々な反応を見せるだろう。自らのやましさを覆い隠す為に怒りだす者、涙を流して悔い改める者、自らの意思を放棄し他人の決断に流されようとする者。同じ台詞の繰り返しが、多様な起伏を生む豊かな映画である。