事件前夜

主に映画の感想を書いていきます。

ジョシュ・クーリー『トイ・ストーリー4』

 

斬新な設定と驚異的な作り込み、抜群のストーリーテリングで次々とヒット作を量産し続けるピクサースタジオだが、続編となると『ファインディング・ニモ』にせよ『モンスターズ・インク』にせよ、なかなか前作を超える作品を生み出すのは難しい様である。まあ、1作目がそれだけ完璧な出来だったという事なのだろうが…そんな中で『トイ・ストーリー』に限っては2作目、3作目と非の打ちどころのない仕上がりで、4作目の製作が発表された時には逆に不安を覚えたものである。あれだけ完璧な終わり方をした『3』の後で、これ以上何を語るというのか。正直、蛇足にしかならないのではないか。しかし、いよいよ公開された『トイ・ストーリー4』はその様な不安を払拭する作品だった。シリーズのファンは今すぐに映画館に走るべし。過去作と同等、いやそれ以上の感動が待っている筈だ。

とにもかくにも、ビジュアル面での進化が素晴らしい。もともと『トイ・ストーリー』シリーズはプラスティック、布、金属、ゴム、陶器といった様々な素材で作られたおもちゃ達を見事に描き分け、幼い頃に私達が遊んだおもちゃの記憶を鮮烈に呼び覚ましてくれたものだが、本作に至ってテクスチャの描き込みは更に精密になり、手を伸ばせば触れられるのではないか、と錯覚する程の実在感に達している。そして、彼らが実に見事な演技を見せてくれる。CGで作られたキャラクターに演技というのもおかしな話だが、キャラクターの表情、身振りはまさに演技と言うしかない。緻密なカメラワークやライティング処理も相まって、観客は彼らの存在を(つまらない実写映画より)はっきりと感じ取る事ができる。だからこそ、ウッディとバズのやり取りに涙し、新キャラクター、ギャビーギャビーが打ち明ける孤独に胸を打たれるのである。

『3』でアンディとの別れを経験したウッディだが、今作ではより大きな別れが彼を待ち受けている。しかし、それは決して哀しみをもたらすだけの別れではない。むしろ、彼を新たな可能性の広がる未来へと導いてくれるものなのだ。おもちゃではない私達も、この映画が示した結末に大きな希望を感じ取る事ができる筈だ。ウッディとバズをめぐる物語は、本作をもって真の完結を迎えたのである。

…と、ここまで書いて、このラストなら『5』も作れるんじゃないか、と思えてきた。

 

あわせて観るならこの作品

 

ぜひ、過去作を全て観てから『4』をご覧頂きたい。唐沢寿明所ジョージの好演が光る吹き替え版がおすすめ。そういえば、今作ではチョコレートプラネットの2人が新キャラクターの声優を担当していて、さすがに息の合ったところを見せてくれていたが、採用前に色々と身辺調査されたのだろうな、と思った。