ドロタ・コビエラ他『ゴッホ～最後の手紙～』

ゴッホ 最期の手紙 [Blu-ray]

まさに、超絶技巧。絵筆をキャンバスに叩きつけた様なゴッホの荒々しいタッチは、どう考えてもアニメーションには不向きな筈である。それを成立させているのは、製作に参加した油絵画家たちの、気が遠くなる様な手作業なのだが、考えてみればゴッホの半生を追う映画として、これ以上の手法は無いだろう。画家にとっての内面とは彼が世界を見つめる眼差しであり、意思とは絵筆の軌跡である。私たちが本作で垣間見ているのは、ゴッホの内面が実体を獲得し、外に向かって開かれていく感動的なプロセスに他ならない。本作における登場人物たちの言葉や身ぶりは、物語を成立させる為の恣意的なキャラ付けではない。それはゴッホの肖像画から自然に導き出された生命の運動なのである。