事件前夜

主に映画の感想を書いていきます。

ヨン・サンホ『新感染 ファイナルエクスプレス』

 

映画にしろゲームにしろ漫画にしろ、巷にこれだけゾンビが溢れていると、オリジナリティのある作品を生み出すのも難しい。本作の独自性は、ゾンビが跋扈する舞台を走行中の高速鉄道に据えた事である。鉄道を舞台にする事で、画面構成は自ずと直線的になる。また、ゾンビは扉を開く事ができないので、舞台は車両毎に分断される訳だ。この設定は、非常に上手い。逃げ場の無い車両で後方から大量のゾンビが追い掛けてくる恐怖と、車両を脱して扉を閉めた時の安堵感、この繰り返しが映画のテンポを良くしているし、バラバラの車両にゾンビと登場人物を配し、途中でその配置を入れ替える事で物語の展開に変化を与えている。もちろん、鉄道という設定を活かしたアイデアが至る所ふんだんに盛り込まれ、フレッシュな映像と筋運びで最後まで飽きさせない。惜しむらくは列車を途中下車した途端にテンポが少し落ちる事と、いくら何でも登場人物が類型的に過ぎる事だろうか。マ・ドンソクの男気には映画のプロットとはもはや無関係にしびれる。