事件前夜

主に映画の感想を書いていきます。

緊急事態不機嫌日記(5/4~5/10)

5/4
連休3日目。妻から、「どうせ何もやる事がないのだから、庭の手入れをして欲しい」と言われたので、庭の雑草抜き。ついでに、以前空き巣に入られた際に庭に撒いた防犯用の砂利がものすごく汚れてきたので全て回収した。結局、セキュリティ会社と契約したのでこんな物は全く不要になったのだ。しかし、集めた砂利をどう処分していいのか分からない。通常ごみに出す訳にもいかないし、粗大ごみとしても対象外である。仕方なく、庭の片隅に山積みする事になり、何かの採掘現場みたいな有り様になってしまった。
その後、トラヴィス・ファイン『チョコレートドーナツ』を鑑賞。ゲイのカップルが育児放棄された障害者の少年の里親になろうとする物語。アクチュアルな問題と誠実に向き合った映画だが、主人公たちの戦いはあくまで法的な手続きに則って申請され、審理され、判決が下される。親と子の愛情、という法律では割り切れない問題を、しかし私たちはあくまで法律によってしか解決できないのだ。この映画では、ゲイカップルの職業をそれぞれ弁護士と歌手に設定し、裁判所でのロジカルな言葉の応酬と、ステー上で解き放たれるエモーショナルな歌の対比によって現実の複雑さを描いている。
5/5
連休4日目。連休といっても煙草を買いに行くぐらいしか外出する用事が無い。で、私が愛飲しているploom techがグレードアップ版の「ploom tech plus」本体を抽選で6万名にプレゼントする、というキャンペーンを実施している事を知り、先日来応募し続けているのだが、全く当たらない。私はメルマガ登録もしているので、当選率は2倍、つまり12万名に当たるはずなのだが…煙草を2箱買うと1口応募。ネットで申し込むとその場で当選か落選かが分かる。だんだん意地になってきて、大金はたいてスマホゲーでガチャを回している奴らの気持ちが分かった気がする。
ジョン・カサヴェテス『チャイニーズ・ブッキーを殺した男』を鑑賞。この作品を謳い文句通りにフィルム・ノワールだと思って観るとと、おそらく期待を裏切られるだろう。この作品はあくまでニューヨークでストリップ・クラブを開く男の、ショーにかける愛情を描いた作品なのだ。博打で負けたおっさんが借金のカタに中国マフィアの首領の暗殺を頼まれる、という無理のある設定も、だから額面通りに受け取ってはいけない。それは夜に生きるしかない男が、自らの拠って立つ場所を守る為に決死の行為へと向かう姿を描く為の、単なる方便なのである。アップと引きの絵を織り交ぜたショットが、この不可解な情熱に駆られて走り続ける男たちをスクリーンに焼き付ける。
その後、ポール・トーマス・アンダーソンインヒアレント・ヴァイス』を鑑賞。トマス・ピンチョンの小説は新潮社から出ている「全小説」を全巻持っているのだが、1冊も読んでいない…だから、原作に忠実なのかどうなのかも判断できないのだった。分かった様な分からない様な話だなあ、とは思うが、それがピンチョンだ!と強弁されると返す言葉も無い。P・T・アンダーソンの映画としては『ブギー・ナイツ』とか『マグノリア』にテイストが似てるなあ、と思った。
5/6
連休最終日。何だかんだと、あっという間のG.Wだった。久しぶりに妻とニトリへ買い物に出かける。ネットで注文していた息子のベッドが届いたというので引き取りに行ったのだが、普段では考えられない様な人ごみで驚いた。どこも自粛自粛で行くあてが無いのだろう。家にいれば、この家具もボロくなってきたなとか、このカーテン、部屋に合ってなくね?とか、色々と気が付く事が多い。結局、私たちも荷物の引き取りだけで済まず、色々と買い物をしてしまった。以前から欲しかった「ホテルスタイルまくら」が購入できたので大満足。
デヴィッド・フィンチャーエイリアン3』を鑑賞。評判の悪い1作だが、まあ決まりきった話ではあるしそれなりに面白いのかと思ったら、これがびっくりするぐらい盛り上がらない。SF仕立てでゴシックホラーを蘇らせた「1」、大戦争アクション映画に路線転換した「2」に続いて、ホラーなのかアクションなのか、どっちつかずの中途半端な作品になってしまった。そこら中に張り巡らされた通風管の中をエイリアンが自在に移動する、というお約束を踏襲しながら、襲うもの、襲われるものの位置関係がはっきり掴めないのが致命的。大味な「2」ですら、その辺はきっちり押さえていたと思うのだが…
5/7
連休は終わったが相変わらずテレワークが続くので、休みの延長みたいなものである。午後から浄化槽の清掃業者が来たり息子の担任の先生が宿題を届けに来たりしたので応対。こんな時期でも外に出て働いている人を見て申し訳ない気持ちになった。
妻は出勤の為、夕飯を作る。生まれて初めてチヂミを作った。ニラと冷凍エビを入れてなかなか上手く出来たと思う。しかし、作ってみて初めて、自分がチヂミなんか少しも好きではない事に気づく。
『エイリアン』繋がりでベリンダ・サリン『DARK STAR H・R・ギーガーの世界』を鑑賞。この人は死ぬまでずっと子供のままだったんだろう。彼の絵は母体への回帰に対する希求がグロテスクな形をとって表れたものなのだ。もう少し映画絡みのエピソードがあるかと思っていたが、その辺りはあっさりと触れられた程度だったので残念。それにしてもギーガーの家は本当にすごい。庭にも家にも不気味なオブジェや絵画が並んでいて、映画に出てくるサイコキラーの住んでる家みたいである。近所の子供が間違って迷い込んだら、恐怖のあまり一生トラウマになるんじゃないだろうか。
5/8
テレワーク。最近、復活を果たした「映画秘宝」がムック時代だった頃の1冊『男泣きTVランド』を読了。ここで紹介されている様な時代劇や刑事ドラマを観ようとするとDVDのBOXセットを購入するか、CSに契約して放映されるのを待つしかないのか。今はTVをつけても、下らないバラエティか気の滅入るコロナ関連のニュースしかやっていない。どうせなら、70年代のTVドラマを再放送してくれれば良いのに。
今日も妻が出勤日の為、夕食を作る。ハンバーグに挑戦したが、こね方が足りなかったのかゴツゴツした不細工な仕上がりになってしまった。
『あつまれどうぶつの森』をプレイ。やっと自宅の増築も3部屋目まで進んだ
。てっこうせきを20個使って作れるてっこつが高額買取の対象になっていたので、効率よくベルを稼ぐことができてラッキーだった。遅くまでゲームをしていたせいか、午前2時まで寝付けない。睡眠導入剤を飲んでやっと寝る事ができた。
5/9
「自粛警察」とか呼んでいい気にさせとくんじゃねえよ、ただの馬鹿者なんだから。そもそも日本人は相互で監視しあって、周りから浮いた行動を取る人間は袋叩きにする陰険で愚昧で臆病な国民性だから、こういった事が起きてもおかしくなかったのだ。所詮、その程度の民度なんだよ。それにしても、単なる嫌がらせとかうっぷん晴らしでやってるならまだしも、これが本当に正義の遂行だと思い込んでいる奴がいそうで怖い。
TVで『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』をノーカットで放映していたので、子供と一緒にだらだらと鑑賞。ノーカットとはいっても、頻繁にCMでぶった切られるのでイライラする。アクション映画としての締まりの良さはシリーズ随一だろう。スパイ映画的な馬鹿々々しいガジェットが楽しめる『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』の方が個人的には好きなのだが。
5/10
今日が母の日だという事をすっかり忘れていた。慌ててネットでプレゼントを物色する。結局、誕生日のプレゼントも兼ねてFURLAのバッグを選ぶ。選んだ後で、内部に内ポケットも仕切りも無くてすごく使いにくいのでは、と心配になる。まあいいや。そもそも、収納物に合わせてバッグを選ぶのではなく、バッグに合わせて収納物を整理するのが正しいのだ。
ひたすら応募し続けてきた「ploom tech plus」のプレゼントにようやく当選した。何だ、やっぱり当たるのか。届くのが楽しみだが、非常事態宣言を受けてploom techの直営店も休業しているので、ケースなど備品を買う事ができない。大阪ではそろそろ休業要請が加除される可能性が高まってきたが…
ルキノ・ヴィスコンティ『ルードウィヒ/神々の黄昏』を鑑賞。これも布施ラインシネマのラストショーで見逃していた作品。ルードヴィヒ2世は別に精神を病んでいた訳ではなく、単に王としての資質に著しく欠けていただけである。心の中に思い描く理想と眼の前にある現実のギャップに苦しむのは誰だって同じだが、彼は理想を現実化するだけの権力と富を持っていた。だからこそ、彼の行動は他者の眼から狂気に見えたのである。本作はヴィスコンティのドイツ3部作のひとつだが、『地獄に落ちた勇者ども』だけ観た事が無い。また、本作の主演を務めたヘルムート・バーガーが再度ルードヴィヒ2世を演じた『ルードヴィヒ1881』という1993年の作品もあるらしく、そちらも観てみたい。そういや、こないだ観た『ゴッドファーザー PARTⅢ』にもハゲヅラ被って出演してたな。