ジャ・ジャンクー『山河ノスタルジア』
緻密な脚本に圧倒された犯罪劇『罪の手ざわり』から一転、1人の女性が生きた25年という歳月を丹念に追う事によって、ミレニアムイヤー以降の中国の変貌とその行く末を描いたメロドラマ。人も政治も、何かを選び取る事で何かを喪失し、決して選び直す事はできない。変化の予感に満ちた「未来」を受け入れ、ただ幾ばくかの郷愁を持ってあり得た筈の「過去」に思いを馳せつつ、あるがままの「現在」を生きていくしかないのだ。Petshop Boys「Go West」の楽天的なビートがシニカルに響く。