事件前夜

主に映画の感想を書いていきます。

ルイス・オルテガ『永遠に僕のもの』


この映画の一番の見どころは、やはり主演のロレンソ・フェロの魅力、という事になるのだろうか。個人的には、身体つきが全然締まってなくて、ぽっちゃり体形なのが良いね。何かこう、ムチムチしてて触りたくなる。

その主人公カルリートスは、盗癖があり同性愛者的な雰囲気を漂わせた青年で、ジャン・ジュネをイメージさせるキャラクターである。ブエノスアイレスで実際に起きた事件を下敷きにして、『泥棒日記』みたいな映画を作りたかったのかもしれない。
従って、映画自体は犯罪実録ものみたいなリアリティを重視したタッチではなく、もっと抽象性の高い、詩的なイメージの連なりで構成されている。オッサンの短パンからはみ出した金玉のアップとか、銃で胸を打たれた後も平気な顔で家中をウロウロした挙句、便器にじっと座ってるオッサンとか、頻繁に挿入されるよく分からないシーンが面白かった。映画の終盤で主人公が読む新聞記事が「養子仲介業者、毛を剃った猿を人間と称して斡旋!」というめちゃくちゃな内容で、しかもそれがどう考えても映画とは何も関係がない。素晴らしい。

もちろん、ポスターにある様ないかにも美少年映画、みたいなシーンもたくさんあるので、そちら方面の期待にもそぐわない出来だ。ただそういったシーンは、社会規範を無視した少年に堕天使的な聖性を見出す、という既存のイメージに頼りすぎている気もする。

 

あわせて観るならこの作品

 

不良映画は色々あるけど、ガス・ヴァン・サントの傑作を。ドラッグに溺れる若者たちの姿を描いた青春群像劇だが、同テーマを扱った『トレインスポッティング』よりよっぽど高級な映画。罪に手を染める一瞬だけ感じることができる全能感。

”たいていの人は一瞬の過ごし方に苦しんでいる”